作品紹介
覇王樹 選歌
◆平成30年 1月号
細長き君の影を踏む この今がいつまでも続く夢を見ながら 高田  好
悲しみを共に語りて五十年雨降れば来る友を待ちをり 友成 節子
ヘルパーの愚痴を聞きゐつ穏やかな一日を少しかきまぜらるる 広瀬美智子
いつ果つるともなく続く介護とふ現は私を縛りて離さず 西原寿美子
上巻の悲しみ終わり下巻へと続く展開 蟬のかしまし 渡辺ちとせ
長ながと影引き遊ぶ子供らの声が聞えてくるやうな耳 臼井 良夫
ふり向けば過去でしかなく表現を競いし本が書棚にねむる 児玉南海子
揺れやまぬカヤの穂先の赤とんぼ耀ふ透き翅きらら煌めく 清水 典子
水菓子の呼び名ふさわし朝採りの梨はるばると友より届く 鈴木 純子
一夜にして雪の重さに折るるとふ吉野の山の杉物語 井手彩朕子
悔いあるやベッドに眠る京男遊び足らぬと口真一文字 山口美加代
すすきの穂白鷺むるる様にして風に従い秋深めゆく 佐々木礼子
満月のしろき光はわが裡をのぞき込むごと襟元にさす 岩本ちずる
いつもなら会釈も今朝は朝顔の色よきを誉め通り過ぎたり 髙間 照子
ここに住みて四十年のうたかたよカレンダー今年の一枚残す 中村ま寿子
高齢者は避難準備の放送に我も含まるると今さら気付く 成田ヱツ子
秋たけていよよ艶もつ実むらさきそと手折りたりその名に寄せて 西尾 繁子
上海は三度目なれど初めての蘇州・無錫の夢に旅立つ 松下 睦子
生きている人のぬくもりを確かめるために乗ります満員電車 森崎 理加
人を待つ風にゆられて月を待つみやぎの萩は花蝶になり 石川  梓
米沢牛昆布巻ありき芋徳利豪栄道ありみな日本一 高貝 次郎
亀山家の垣に馬酔木の咲く頃のある日一会(いちゑ)の鈴花に() 高田 香澄
死へ急ぐ者ら均しく大部屋の秋の夜長を高鼾かく 橋本 俊明
どこがどう縮みゆくのか老いの日を庭の干し竿に干し辛くなる 青山 良子
二尺余の杖に全身委ねつつ地下鉄九條の駅の階段 大森 孝一
透明の青さ続けり竹林の抜けくる風を身に深く吸う 北岡 礼子
彼岸にて西行忌など語りゐむ桜の樹の下大岡信(おほをか)偲ぶ 伊関正太郎
おろし金に白くしたたる大根のツンと来るとき朝のはじまる 浦山 増二
右折するバスの窓より吾を見る乗客はみな老人である 川口 六朗
「ぴったしになった」と言えば九十歳かと応ずる友にひとり苦笑す 草刈あき子
大輪の鶏頭あかく秋日受け散歩の小犬だかれ鼻よす 才藤 榮子
   

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