批評特集 歌集紹介
歌集紹介
大木 平 遺歌集『滄 天』

 平成28年12月15日発行 私家版
 新輯覇王樹叢書第226篇

 滄 天

  • 滄天となれる重たき秋の空少し動きて地に傾きぬ

  • 我が心ほとほともろくなりにけり小さきりんご噛みくだきつつ

  • 自然をば 自然(しねん)と読みて心楽し我が末年のあり方きまる

  • この薬死ぬまで飲めと医師は言ふどう言ふことか我に判らぬ

  • 秋深み日毎に向ふこの机重たきものは遂に動かぬ


◇刊行にあたって

 大木平氏は、元「覇王樹」の同人であった高木一夫の「博物」を受けついで、主宰をなさっていた。大木平氏と私の出会いは、平成六年のある短歌の会合であった。私が、橋田東聲が創刊した「覇王樹」を引き継いで発行していたので、大木氏は好意を寄せて下さっていた。
  ある日、「博物」を畳んで、全てを処理した後、「覇王樹」に入会を希望したい由を大木氏からお聞きした。私より大先輩である大木氏は腰の低い、謙虚な方で、そのお人柄に惹かれていたので、驚くと同時に「覇王樹」に入会頂けることは大変光栄なことであった。私が、「大歓迎ですよ」と申し上げると、大層喜んでいらした。
 入会頂いてから、早速、覇王樹東京圏歌会へのご出席をお願いした。歌会の皆も、何の遠慮もなく、昔からの仲間のように会話していた。大木氏の評をお聞きしていると領けることが多かった。作品もレベルが高いものであった。歌会の皆も大変勉強になったようであった。
 八年弱の短い期間であったが、大木氏の作品の発表の場所として「覇王樹」をお選び頂いたことは、有り難いことであった。お年を召されてからは、歌会 にはご参加になれなかったが、東京圏歌会のいつもの席に大木氏がお座りになっていたような気がしたものだった。
 月日は矢のごとく過ぎていった。昨年七月にご逝去なさり、大変残念であった。私は、大木氏との出会いを忘れることは出来ない。
 平成二十八年八月の末頃、大木氏の奥様から遺歌集を出したいというお申し出があり、快くお引き受けした。「覇王樹」に入会されてからの歌を纏めてみると、大木氏の格調高い作品とその人柄に再び触れることが出来て望外の喜びであった。
 刊行の言葉が書ける光栄に心から感謝申し上げたい。

             平成二十八年十月      覇王樹社代表 佐田 毅


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